医学的には性分化疾患に分類され、呼称はインターセックスなども含めて当事者の間では賛否両論があり、まとまっていないのが現状です。「半陰陽」は、男女両方の性腺をもつものや外性器の性別が曖昧な真性半陰陽、もしくは外性器が性腺の性と異なる仮性半陰陽（精巣組織に女性様性器を有する男性仮性半陰陽、卵巣組織に男性様性器を有する女性仮性半陰陽）を指します。陽と陰、男と女といった対立的にして補完的なものの調和を重視する陰陽思想などに基づいて、半陰陽を理想的な性別のあり方とする考え方もあります。

半陰陽の原因としては、性染色体に稀なものが見られる場合や、胎児の発達途中における母体のホルモン異常が引き起こす場合などがあります。また、モザイク体と呼ばれる、性染色体の構成の異なる細胞を併せ持つ場合もあり、不妊の原因となることがあります。

男女両性の特質を中途半端に兼ね備える場合や、遺伝子上の性別と肉体的性別が通常の組み合わせとは反対の場合もあります。両性の性腺を兼ね備えたものを真性半陰陽、遺伝子と外見とで性別の異なるものを、仮性半陰陽と呼び、後者は性腺上の性別によって、男性仮性半陰陽、女性仮性半陰陽として区別されます。

真性半陰陽では、その性器の状態は人それぞれであり、またその要因は未だ解明されていません。人体に2つある性腺のどちらか一方が精巣、もう一方が卵巣である場合と、卵巣と精巣が混ざった卵精巣を性腺の一方もしくは両側とも有する場合に診断されます。染色体構造は「46, XX」[7]に次いで「46, XY」が多く、「46、XX/46、XYモザイク」も多い。仮性半陰陽と比べてもきわめて稀な症例とされ、半陰陽のなかで外性器異常を最も伴いやすいと言われています。

仮性半陰陽の発生は、その根本的な原因は様々であるが、少なくとも男性ホルモンが関係しているとされています。胎児における外性器の分化は、染色体や遺伝子ではなく男性ホルモンの働きによるもので、外性器の発生する時期にこれが働くことで外性器は男性化を起こし、それがなければ未分化、すなわち女性的な外性器の状態を示します。

遺伝子上は男性であっても、睾丸が男性ホルモンを分泌しません、細胞が男性ホルモンに反応しないなどで外性器が完全には男性化しない、あるいは、遺伝子上は女性であっても母体などからの男性ホルモンの影響で外性器の男性化が起こるといわれています。

仮性半陰陽の場合、外見的には表に出ている男性または女性そのものであることも少なくないため、周囲はもちろん当人も全くそれに気づかない場合もあります。精巣や卵巣も形成され、たとえ遺伝子情報のそれと反していても、外見通りの性別に成人します。たとえば遺伝子は男性だが女性の形態をとる男性仮性半陰陽の場合、本人もそれと知らずに結婚、一生を女性として過ごすこともありえます。

社会的には現在、半陰陽の状態を持つ人々は日本ではほとんど認知されていませんが、近では、性的ファンタジーとしての両性具有ではない、半陰陽の状態を持つ人の現実的な問題を描いた漫画『IS〜男でも女でもない性〜』（著：六花チヨ、講談社刊）が話題となり、以前より少しは半陰陽の状態を持つ人々の存在が認知されるようにってきました。しかし、これらの作品でも半陰陽について分かりやすい解説を加えているにもかかわらず、その概念が理解できず、未だに「性同一性障害」「トランスジェンダー」と混同している人が多いのが現状です。

外見の治療法として、外性器の形成手術を行う治療が考えられます。いわゆる性転換手術にあたる手術を行うことで、染色体の性別と合った形の外性器に形を変えることができます。内面の治療法としてはホルモン補充による治療があります。実際に半陰陽の芸能人・有名人の中でもこのような治療を行った人もいるようです。

中谷美紀は、「ケイゾク」「電車男」「嫌われ松子の一生」「清須会議」「JIN」など数々の人気作品に出演している有名な女優ですが、そんな中谷美紀も半陰陽を噂されている芸能人のひとりです。過去にホラー映画「リング」「らせん」シリーズで、かの有名な山村貞子役を演じたことがありますが、実はこの貞子こそが半陰陽という設定だったことから中谷美紀自身も半陰陽なのでは？と話題になり、同性愛疑惑も根強くあります。

デュティ・チャンドはインドの陸上選手で、たくましい体つきを複数の選手たちが指摘したことを受け、インド体育連盟はチャンド選手に血中テストステロン検査を求めました。検査の結果、「男性ホルモンのレベル」が高すぎるので、出場できないと伝えらます。

テストステロンのレベルを低下させるために必要な手術やホルモン療法を受けるか。この規定自体を裁判で争うかの二択を迫られたチャンドは、後者を選んで勝訴、リオオリンピックへの切符をつかみました。

IVANは、日本のファッションモデル、ミュージシャン、タレントで、デビュー当時は全く売れず、一時はホームレスも経験したことで有名です。IVANは、性同一性障害であること、性別適合手術を受けていることを公表していますが、話題になっている半陰陽か否かは公表していません。

ヤルミラ・クラトフビロバは、チェコスロバキアの元陸上競技選手で、1983年に、800mで1分53秒28、400mでは47秒99という世界新記録を樹立しました。400mに関しては2年後に奪還されたものの、史上2位という記録を残し、800mに関しては今もなお世界記録を保持しています。

男性的であるルックスや30歳前後から驚異的に記録が伸びた為に、ドーピング疑惑や性別疑惑が向けられましたが、半陰陽なのか否かなど、実際の真相は明らかになっていません。

エワ・クロブコフスカは、ポーランドの陸上競技選手で、1964年の東京五輪では400mリレーに出場、金メダル獲得に貢献、さらに女子100mでは銅メダルを獲得しました。しかし「男性的な外見だ」とメディアに取り上げられ、1967年、身体検査に代わる新しい性別検査「染色体検査」で失格とされた最初の選手となってしまいます。

IAAFは染色体異常があり、女性として競技に出場する資格はないと裁定。「詐欺師の男」と批判し、メダルを剥奪しますが、翌1968年、男の子を出産したことでIOCは1999年、メダルを選手に返却しています。

サンティ・ソウンダラジャンは、インドのタミルナードゥ州出身の陸上競技選手です。2006年、ドーハであったアジア競技大会。インドのサンティ・ソウンダラジャン選手は女子800mで銀メダルを獲得しますが、翌日、血液検査に呼び出されメダルを剥奪されてしまいます。その理由がY染色体を持っていたため、「女ではない」とされたことです。半陰陽だったのでは？と多くのファンが関心を示しました。

中村中は、「友達の詩」のヒットで知られるシンガーソングライターで、自身が性同一性障害であることを公表しています。2007年6月27日にリリースした「リンゴ売り」のリリックはまさにそのことをテーマにした曲で多くの人に衝撃を与えました。しかし中には半陰陽を疑うファンも根強く、本人も明らかにしていません。

エディナンシ・シウバは、ブラジルのパライバ州出身の柔道選手で、1997年、2003年の世界柔道でそれぞれ銅メダルを獲得する実力者です。そんなシウバは、自身が半陰陽であることを理由に女性として競技に参加することを望んだために、オリンピックでのセックスチェックに抵触しないように90年代半ばに手術を施したことにより、女性として認められたという経緯を持ちます。